ドゥカティとうまく付き合うためには...
エンジンダイナモ室
 まず、自分のものになったら、きれいに磨きましょう。
 
 「この人、病気じゃないの?」と思われるほど光らせるのは、それはそれで問題アリですが、自分の愛車の健康状態を把握するために、各部をきれいにしておくということは大切です。前回掃除した時と違う症状(オイル漏れ、傷、錆び等)を見つけたら、早めに対処することが必要です。

 
 エンジンオイルの管理はしっかりと。
 
 走行何kmで必ずオイルを交換しなければいけない、とは言いませんが、せめて量だけは頻繁にチェックして下さい。量が少ないのはもちろん問題ですが、ある日突然、量が増えていることだってあるのです。その場合には、水冷の車輌なら冷却水がオイルに混入した可能性や(ウォーターポンプのシールから何かの原因で水が侵入することが多いです)、何かの原因でガソリンがクランクケース内に流れ込んでしまったということもあるのです。キャブレターの付いた車輌で、キャブレターがオーバーフローしっぱなしなら、こういうこともそんなに珍しくはありません。いずれにしろ、こうなったらエンジンオイルはオイルの役目を果たしませんから、まず原因を突き止めてオイル交換ですね。

  
ファクトリー奥の作業室

 
 エンジンオイルについて。
 
 ドゥカティのオイル警告灯は、油圧スイッチを用いたものです。つまり油圧警告灯であり、決して油量警告灯ではありません。走行中に点灯したら、それは油圧の低下を意味するので、すでにオイルを足せばいいという問題ではなくなっているのです。
 
 オイル交換時、抜いたオイルにはいろいろな情報が含まれています。それを観察することで、エンジン内部の状態をある程度推測することができます。そのためには、オイルを観察しやすい、きれいなオイル受けに受けること。それから、まず色や粘度等を観察します。色が、その走行距離にしてはあまりにも黒っぽいなら燃調が濃いとか、燃焼ガスのクランクケース内への吹き抜けが多いとか、コーヒー牛乳の色をしているなら水が混じっているとか、あまりにもシャバシャバしているならガソリンが混じっているとか、他にもいろいろあります。つぎに、オイル以外の異物。時には折れたスプリングの破片とか、欠けたギアの歯とか、誰が見ても判るものもあります。通常は細かい金属片や粉が多いですが、鉄か、アルミか(磁石をつければ判ります)、剥げたメッキか。こうして考えてゆくと、ロッカーアームのメッキの剥離くらいは、抜いたオイルから判断できる場合もあります。
 
 ちなみにオイルの品質についてですが、やはり安心して勧められるのは100℃での粘度が50と表示してあるもの。例えば、10W-50、15W-15、20W-50というものです。最近巷では粘度の低いオイルが流行しているようですが、ドゥカティに限ってはやはり50番は必要だと私は思います。特にサーキットを走る人、悪いことは言いません、20W-50を入れたほうがいいですよ。私の経験からすると、サーキット走行をする場合、薄いオイルを使うとヘッドのロッカーアーム、カムシャフト間の潤滑と、駆動系ギア(1次減速及びミッションギア)の歯面の潤滑に問題が出ます。確かに薄いオイルを使うと、ベンチの上でも馬力は少し上がるんですけど、壊れてしまっては元も子もないでしょう。

 
ファクトリーメイン・ルーム

 
 エンジンの慣らし運転について。
 
 慣らしをしないと壊れる、ということはないです。全日本でも、慣らしはせいぜい数周しかしませんでした。でも慣らし前と後で馬力を比べると、慣らしを終えたもののほうが確実に馬力がUPしています。これは特に高回転域で顕著です。他にもいろいろな要因は考えられますが、慣らしを行うことによってピストンリングとシリンダーの当たりがつくと、ガスシール性が高まるということが特に大きな理由だと私は考えます。レースで使う場合、新組みのエンジンやピストンリングを新品にしたエンジンは、はっきり言って遅いです。全日本をやっている時、この事は度々ライダーからクレームをつけられました。ですから、そういうエンジンは公式練習で使って、予選からは新品ではないオーバーホールしたエンジンを使うということで対応していました。

 
ファクトリー事務所前にて

 
 そして最後に.......雨の日は乗るな!?
 
 雨の日は乗るな、とは言いませんが、私は雨の日にドゥカティに乗っても(レースは別です)、あまり面白くないと思うのでお勧めしません。一番の理由は、ドゥカティが錆びやすいからです。いくら丁寧に水気をふき取って掃除したとしても、水は各部の奥の奥まで入り込みます。エンジンマウントボルト、スイングアームピボットのシャフト、アクスルシャフトの周り、スイングアームの内部等、意外なほど浸入しているのです。実際、こうした部分が錆びだらけに腐食した車輌を整備したことがあります。