チーム・多田勉の仲間 2000年もて耐参戦記
back next
さて、決勝日。
 私はこの日の朝にサーキット入りしました。  予選さえ通ればOKとの想いがあったので、今まで給油やタイヤ交換の練習や打ち合わせは一切やっていません。決勝までの僅かな時間でこのあたりの事を初めてスタッフと打ち合わせしました。実際に給油やタイヤ交換の作業を何回か練習して、遅くても良いから確実に行こうという作戦に決定です。.....さてもうそろそろ決勝が始まります。

 決勝はル・マン式のスタートで、スタートライダーは舩木選手。マシンを支える役は私でした。ライダーがマシンにまたがるときに頭を蹴られないように、マシンの後ろでマフラー先端を持ち体勢を低くしてマシンを支えます。  シグナルがグリーンに変わり、ライダーが一斉にマシンに駆け寄りスタートして行 きます。舩木選手も無難にスタートを決め、1コーナーへと消えて行きました。  オープニングラップも予選順位と同じくらいで戻ってきて、順調な滑り出しです。

 
 その後も順調なペースで周回を重ね、一時的に順位は10番台にまで上がりました。 そんな感じでちょっとライダー張り切りすぎか?と思っていた矢先、マシンがコントロールラインに戻ってきません。  転んだのか、トラブルなのか、情報がないので判りません。暫くしても何の情報も伝えられず、らちがあかないのでコントロールタワーに行って聞いてこよう、という事になりました。その時、ピットロードの入り口にマシンを押す舩木選手の姿が現れたのです。

 聞くと裏ストレートの先の90度コーナーでフルバンク中に遅いマシンに追突しそうになり、思わずフロントブレーキに指をかけたらフロントからスリップダウン。マシンはグラベルの中に埋まってしまい脱出に手間取ってしまったとのこと。オフィシャルの手を借りてやっとグラベルから脱出し、コースサイドを押してきたとの事です。

 
さあ、マシンの修復です。
 
  外観から判断すると大破...とまでは行かなくとも中破というところ。まず色々なところに入り込んだグラベルの砂利を取り除きます。もてぎは 4輪用のコースとして設計されているようで、このグラベルの砂利が半端でなく深く 、2輪が転倒してここに突っこむと砂利まみれになってエライことになるのです。 それから無くなったステップやレバー類を交換し、割れたカウルもスペアに交換です。

 だいたいめどが付いたところで、最後にちょっと気になったのでタイミングベルト廻りをチェック、バルブタイミングを確認してみました。 するとなんと、フロントバンクのエキゾーストカムシャフトプーリーのポンチマー クがずれているではないですか。それも2山も。グラベルに突っこんだ時にベルトの間に砂利をかみ込み、その結果としてタイミングベルトの山がタイミングプーリーの山を飛び越えたのです。

 通常1山だったらバルブとピストンは干渉しない場合が多いのですが、2山となると 角度にしてなんと40度。それを見たとき、はっきり言ってこれはダメだろうと思いました。ベルトを外してカムシャフトのプーリーを手で回してみてスムーズに回らなければ、バルブが曲がっているという事で一巻の終わりです。 果たして?.....一種独特の緊張感の中、ベルトを外してカムシャフトプーリーに手を掛けました。ゆっくり回してみます。すると何の抵抗もなく回りました......信じられないことに。

back next