名車復活計画 その1
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 ここ最近の数ヶ月間、ナゴヤは何に夢中になっていたかといいますと、久しぶりの自分用街乗りバイクの製作です。 で、車種は何かといえば、画像がそのコックピットです。ステアリングヘッドの上にあるシリアルプレートはSP4-043となっています。888SP4? いえいえ、これは888SPSです。

 888SPSがどんなバイクかもう一度おさらいしますと、92年モデルの限定車である888SP4に当時の888コルサの部品を組み込んだ限定車中の限定車、総生産台数世界で101台、ドゥカティストリートバイク史上一番過激なモデルだったと言って良いでしょう。私の記憶によれば当時日本での正規輸入車は11台が輸入元のムラヤマモータースから販売されました。当時の車両価格は300万円台の後半で、とても当時の私に手の届くものではありませんでした。

 基本的にSPSはSP4をベースに製作されたものですので、シリアルプレートもSP4となっています。諸説ありますが、私の見解ではフレームもSP4と共通です。(パーツリストに掲載されているパーツ番号が同じというのがその根拠です)部品さえ組み込めばSP4からSPSを製作する事も可能という言い方もありますが、部品の入手に関して難易度が高いのでそれは当時から現実的ではなかったと思います 。

 外から見える大きな違いは当時のコルサ用サイレンサーと、同じく電動ファンを持たない大型ラジエーター、それにカーボンタンクが装着されているということでしょう。カーボンタンクに関しては、正規輸入車の場合ムラヤマモータースがオリジナルのアルミタンクに換装して車両をデリバリーしていたのであまり出回っていないようです。

 SP4との大きな違いはエンジン内部にあります。当時のコルサと同形状のハイコンプレッションピストン、同じくコルサのインテークカムシャフト(Gカムと呼ばれます)、大径化されたバルブ(INφ34mm、EXφ30mm)、コンロッド、クランクシャフト等、枚挙に暇がありません。クランクシャフトを支持するベアリングも一般的なボールベアリングではなく、当時のコルサと同じローラーベアリングが使われています。

 公道仕様車としてはあまりに尖ったスペックを持ち、ある意味未完成で 不完全なバイク。ツボにはまればレーシングバイクそのものの走りを披露し、そうでない場合は走らせるのに苦痛を伴う。趣味性があまりに高く、なおかつオーナーの所有欲も満たしてくれる。こんなものをストリートモデルとして販売する事が出来たのはやはりその当時の「時代性」によるところが大きかったと思います。WSBで888が快進撃を始めた頃でドゥカティ社には勢いがあったと思いますし、社会もまだこんなバイクを許容した時代だったのでしょう。

 全ての環境が変化してしまった現代において、こんなタイプのバイクが市販される事は永遠にあり得ない事でしょう。だからこそ今の時代においてなお、このバイクの魅力はあらゆる意味においてその輝きをさらに増しつつあるのだと思います。
 ところで一目でSP4とSPSを見分ける方法があります。それはこの2車はフロントフォークのオフセットが異なるということです。

 SP4-043がSPSで、フォークオフセットが25mmです。方やSP4-353はその名の通りSP4で、フォークオフセットが30mmです。慣れればトップナットやシリアルプレートの位置関係で判別は一目瞭然です。ナットのタンク側スペースの違いや、SPSのシリアルプレートがキーシリンダー側にはみ出している事が理解できると思います。ちなみにこのフォークブラケットはとっくに欠品廃盤になっていますので、入手困難です。