名車復活計画__その2__888SPS__TFD弐号
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 使用するピストンコンプリートです。これはオリジナルです。綺麗に見えますが、勿論新品ではなく使用していたものです。画像のように状態は全てにおいて良好です。
 今回新しい発見がありました。下左の画像は左が今回のSPSのピストン、右が93年型888レーシングのピストンです。造りが酷似していると思い、比較してみました。上から見たところ、インテークバルブのバルブリセスの大きさと、ヘッドの山の盛り上がりが若干異なることが判ります。そして次の画像はピストンの裏面です。何と鋳込んである番号(おそらく製造番号かロット番号と思われます)まで全く同じなのです。

 この事実から想像できる事は、この2種類のピストンは元々同じブランクから造られているということです。異なるのはピストン上面の機械加工だけで、山の盛り上がりを大きく残し、φ36mm用のインテークバルブに合わせて大きくリセスを掘ったのが888レーシング。もう少し山の盛り上がりを削って高さを低くし、φ34mmのインテークバルブに合わせたリセスを掘ったのがSPS用ということになります。 つまりSPSのピストンは、若干形状は異なるものの、888レーシング(コルサ)のピストンと基本的に同一ということですね。
 下の画像はシリンダーです。これは工場出荷時の部品ではありません。このエンジンをレースで使用している時は926cc(ボア径φ96mm)で走っていたので、オリジナルのφ94mmのシリンダーが無かったのです。そこで代わりに使用する決定を下されたのがこのシリンダーです。888SP4の部品なのでオリジナルと全く同じ物、正直に申告する意味も無いのですが、、、。この部品は前述の優先順位1に当てはまります。

 次の画像はシリンダーヘッドとバルブです。これも工場出荷時の部品ではありません。このエンジンをレースで使用している時、オリジナルのヘッドにはオリジナルよりも2mmオーバーのφ36mmのインテークバルブが組み込まれ、それに合わせてインテークポートも拡大されていました。そのヘッドをそのままの状態で使用することも検討しましたが、そうするとφ36mmのインテークバルブに合わせてピストンのバルブリセスを拡大する必要が発生します。それを嫌って、バルブを元のφ34mmに戻すためには、大きくカットして広げてしまったバルブシートをオリジナルの部品に交換すれば良いのですが、でもそうすると今度は既に拡大してあるポートとオリジナルのシートが合わなくなります。
 以上の事項を検討した結果、オリジナルのヘッドは使用せず、SP5のヘッドを使用することにしました。バルブも同様にSP5の部品です。これは優先順位2に当てはまります。これらはSPSの部品と部品番号は同一です。バルブに関してはオリジナルかどうか判別不能で年式も特定できません。しかしヘッドは、部品番号が同じで同一部品であるとはいえ、年式の特定は出来ます。

 下の画像左はSPSのヘッドです。「G」の刻印があり、製造時期が91年となっています。SPSは92年式のバイクなので、ヘッドの製造はその前年(91年)になりますね。次の画像はSP5のヘッドです。当然こちらも「G」の刻印がありますが、製造時期が92年となっています。このことで両者の見分けが付きますね。でも、もし当時オリジナルのヘッドを壊してしまって、純正の補修部品で修理していたとしても、おそらくこの92年型のヘッドがデリバリーされたと思われますので、気にすることも無いでしょう。

 製造年の刻印以外にも違いがあります。右端の画像は左がSPS、右がSP5ですが、良く見るとその違いが判ります。4本のロッカーピンの中央にある窪みの有無です。それに加えて、本来ヘッドナットが位置するであろう辺りに、SPSには数字やアルファベットの刻印が見えますが、SP5にはそれもありません。92年と93年の間を堺に、メーカーのシステムに何かの変化があった様ですね。93年モデルは既に916を想定して製造されていたのかもしれません。

 そしてもう一つの大きな違いがこれです。燃焼室の画像ですが、よく見ると燃焼室の形状が若干異なります。同じピストンを使用すれば、SP5の方が高圧縮である事が判りますね。燃焼室内の機械加工の仕様が違います。やはり年式が新しい方が性能的に進んでいるということです。しかし部品番号は同じなんですよね。
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